今年の大学での講義テーマは「人工知能」
自分が人様に教えられるほど、知識があるとも勉強しているとも思ってはいないけれど、受講する大学生より少しは先を行っているので、「人工知能」を取り上げています。
人工知能の最新ニュースを追いながら、基礎的な知識を身に着け、自分の10年先の仕事を想定して、そこに人工知能がどう関わっているのか予想する。そして自分は何をやっていくべきなのか考え、みんなの前でプレゼンするという内容。人工知能だけでなく、取り上げた職種の業務内容も知らなければならない。
とはいえ、10年先に人工知能がどうなっているのかなんて、ネットで検索すればある程度は出てくるけど、実際のところはわからずに想像でしか語ることはできません。
そういえば、虚構新聞にこんな記事が出ていました。
人工知能で愛ある政治を 「新党AI」きょう設立(虚構新聞)
科学者の相部氏ら研究チームは28日、人工知能(AI)に政策判断を一任する政治団体「新党AI」を10月の衆院選に向けて設立すると発表した。ヒトによる不合理な政治を一掃し、国民に愛(AI)ある政治を届ける社会実験に取り組みたいとしている。
記事の最後には、さすがにニヤリとさせる内容が入っているけれど、前半を読むと「いやあ、あるでしょう」と思ってしまう。
実際に、人工知能の世界的権威であるベン・ゲーツェル氏が、AI政治家を開発しているという話(こっちはホント)があり、虚構新聞の「新党AI」は、あながち嘘だとも言えなさそうだ。
生徒には、あと2週間で自分のキャリアを予想して、それとAIとの関わりをみんなの前で発表するという課題を出したけれど、まずは自分でやってみることにしました。
取り上げたのは「政治家」。自分がなるというのではなく、仕事上考えておいたほうが良いかと思ったので。どうせやるなら面白いほうが良いだろうと、空想科学小説のあらすじ風に書いてみます。小学生の作文程度かもしれないけど(小学生の方が上手いというツッコミは無しでお願いします)。書いてみて自分がつまらなければ、すぐに終了となります(苦笑)。
マルオ登場
2025年に、ベン・ゲーツェル氏が初のAI政治家「ロバマ」の誕生を世界に発表する6年前の2019年、日本では政策立案にAIを使おうという地域政党『未来』が、東京都新宿区で立ち上がった。『未来』の代表である大木晋輔は、同年に行われた統一地方選挙の新宿区議選で、世界初のAI候補者を立てようと模索したが、現在の公選法の壁を超えることはできずにあえなく断念した。
『未来』は、東京都の別々の自治体に11人の候補者を擁立したが、知名度もなく全員落選するだろうと思われていた。11人の平均年齢は29歳と若かったし、全員がその自治体出身でなかったのだ。これでは泡沫候補と見られてもしかたない。
告示日となり、選挙戦が始まった。統一地方選挙は4年に一度、千ほどの選挙が4月の前半と後半に分かれて行われる。『未来』の候補者たちが参加した自治体選挙は後半となる。
意外なことに、『未来』はマスコミから注目されることとなった。それは、政策立案にAIを採用したからだけではなかった。候補者のポスターやチラシのデザイン、演説原稿作成、選挙カーのデザインやルート作成、事務所スタッフへの作業指示までもがAIが関わっていたからだ。
そのAIは、直径30センチほどのグレーの球体だった。一箇所に大きなくぼみがあり、表面には無数の小さな穴のような模様があった。初めて事務所に来た人は、スター・ウォーズに登場したデス・スターの模型だと思うかもしれない。
事務所スタッフは「マルオ」と呼んでいた。
マルオは11人の候補者の事務所に24時間情報を送り続けた。街頭演説で、アクションカメラの映像をマルオに送ると、瞬時に聴衆の表情から反応を分析し、「子育て政策の話を1分長めに」「声を半音高くする感覚で」などと候補者に指示を送った。
選挙カーに積んであるタブレット端末には交通状況を考慮したルートが表示され、予定されている演説場所に来た有権者やスタッフのスマホには、最新の到着時刻が表示されていた。
ウグイス嬢は、各陣営にひとりベテランが入れば良く、ウグイス嬢のいない陣営もあった。選挙カーに設置された車載カメラにより、道路上やマンションの7階で手を振る市民を確実に捉えて、お礼がスピーカーから流れる。学校や公共施設の近くでは自然と音量が下がり、選挙戦が終盤となると熱さが増してくる。
実態のない不気味さを感じる市民も多かったが、マスコミがこぞって「世界初のAI選挙」と煽ったこともあり、ネットには賛否が入り混じり、炎上状態となった。『未来』の候補者一覧には何のことかわからない数字が表示され、それは刻々と変わっていった。選挙最終日なって、その数字が「当選確率」であったことがネット上で暴露され、公選法との絡みでさらに議論が進んだ。
投開票日。全国から注目された11人の候補者は全員が当選した。
さすがに、専門家で11人全員の当選を予想したものはいなかった。ドラマであれば安易な展開だ。しかし、候補者を選定したのがマルオであることを知ると、人工知能への興味は畏怖へと変化していき、ワイドショーでは連日専門家がいい加減なコメントを発し、新聞や雑誌は競って特集を組んだ。
この事例は海外でも取り上げられ、マルオは一週間で世界一有名なAIとなった。
(続く・・・かどうか)