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出版

書籍が売れない時代

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書籍の落ち込みが止まらない。

紙の出版物、落ち込みが止まらない。本屋も激減し、雑誌は前年比91.6%(Economic News)

自分で出版社を立ちあげてみて、わかったことが三つある。

  • 紙の書籍はリアルな営業をしないと売れない
  • 電子書籍は紙の書籍より売れない
  • 企画力が落ちるとそもそも売れる本ができない

ということだ。

そりゃあ、ほとんど何もしなくても売れる人もいる。電子書籍だけをガンガン売っている人もいるでしょう。

しかし、かなりの割合で上記の三つが当てはまるはずだ。

うちのような「個人出版社」ではなく、社員を何人も雇い、10年以上出版事業に携わっている出版社を見ていると、「売れるには営業が必要だ」という事実にまずたどり着く。当然といえば当然なんだけど。

ここでは、自分の頭の中を整理するために、社員数人で社長が自ら営業や事務作業までする中小出版社を例に、中小出版社が置かれている厳しい現状を整理してみたい。

紙の書籍を売るには営業が必須

全く営業していない「長野10月革命」

全く営業していない「長野10月革命」

自費出版でも企画物でも、出版した時点ではただの「紙」だ。これを店頭に並べてもらい、アマゾンなどのネット書店に登録し、リアル書店でもネットでも買ってもらえるようにして、初めて「書籍」となる。これが第一歩。

書店に並べるためには日販や東販などの取次を通さなければならない、と普通は考えがちだが、そんなことはない。直接書店に連絡して期間限定で置いてもらうことは可能だ。しかしそれには一つ一つ交渉して、納品、管理、返品、請求、領収と、多くの作業が発生する。まあ、そのために卸があるようなもんだけど。

スタンダードな方法で販売するとして、取次を通すにしても、書籍の宣伝は自分でしないといけない。

一般的なのは新聞に広告を出すことだ。しかし、これはかなり費用がかかる。よほど売れる見込みのある本でないと、広告費用はかけられない。

メディアで取り上げてもらうのも有効な方法だが、当然のことながらどんな本でも取り上げられるとは限らない。しかも自費出版や電子書籍のみの場合、社会現象にでもならなければ取り上げてもらうことはかなり難しい。本屋に置ける場合は、持っているツテを通じて、取り上げてもらえそうなところに売り込む。この時必ず必要なのはチラシだ。まずは「本を読んでみよう」と思わせることが重要。

足を使った営業も大切だ。各書店をまわり、注文を取る。飛び込みで入る場合もあるだろうが、長年やっていると書店とも顔なじみになるので、挨拶がてら本の紹介をして注文を受ける。

僕の知り合いの出版社社長は、ほとんど一年中全国の本屋をまわっているように見える。それだけ費用もかかるわけだが、逆に言うとそれくらいやらないとなかなか売れないのだろう。

それだけやっても、年々老舗の書店が閉店に追い込まれている上に、受注規模も縮小の一途をたどっている。今まではポンっと30冊ぐらい注文してくれていたところが、今は5冊とか10冊とか。

営業で書店においてもらえることになったとしても、平積みになるのと棚に一冊だけ入れられるのでは天と地ほど違う。新刊コーナーに平積みにしてもらってやっとスタートラインに立てる。

期間内に売れ残って返品された書籍は、傷が付いていないか確認し、カバーが汚れている場合は擦って汚れを落とすか新しいカバーに替えて新たに書店に送る。

新刊の企画も進めなければならないので、365日地道な営業活動と並行して続けることになる。

これだけやっても書店は減るし、必ず本が売れるとは限らない。博打のようなものだ。

次に続く

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