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志布志市のPR動画『うな子』は新しいステマなのか

投稿日:2016年9月26日 更新日:


鹿児島県志布志市のPR動画『うな子』が炎上状態

鹿児島県志布志市がふるさと納税用にアップしたPR動画『うな子』が賛否両論となっている。

うなぎを若い女性に擬人化し、大事に「養う」ようすが描かれているが、それが「飼育」「スクール水着」「監禁」といったイメージからロリータポルノを連想させるというものだ。「女性蔑視だ」という批判も多い。

私のFacebookのタイムラインではほとんど罵倒に近いコメントでシェアされていたのだけれど、たしかに「これはボロクソに言われるだろうなあ」と思いつつ、クレームが殺到しているであろう志布志市が、「クレームを受けて動画を削除します」となるのはどうかなあ、と思った。

※追記:肝心のビデオは志布志市が削除しました(2016.12.5)

この手のビデオをネットに公開すれば、批判が殺到して炎上することは十分予想できたはずで、それが予想できなかったとしたら、その意思決定ルートに問題があるといえる。PRTIMESには、鹿児島県がうなぎ生産量日本一で、その中でも志布志市がナンバー・ワンだという説明の後に

この動画では、うなぎを擬人化し、志布志でうなぎが大切に育てられている様子を描いています。

物語は、真夏のプールで、一人の美少女と出会うところからスタート。彼女は画面(あなた)に向かって、「養って・・・」という刺激的な言葉を放ちます。驚きのラストもさることながら、上質でどこか懐かしさを感じる映像に、思わず見入ってしまう仕上がりとなっています。

映像は主に湧き水を使用したプール回りとなっており、美しく豊かな水を存分に感じてもらえる内容になっています。
撮影は、すべて志布志市内で実施。改めて志布志市は、豊かな自然と美しい湾を誇る素晴らしい場所であり、動画を見てくださった方が、「志布志は美しいところ」と思ってくだされば幸いです。

と解説が入っている。ここでは「養って」が刺激的なことばで、おそらくラストの蒲焼きが驚くべきシーンだということなんだろうけど、「上質でどこか懐かしさを感じる映像」というのは違和感のある人も多いかもしれない。ただ、私は「志布志市ってうなぎの養殖で日本一だったんだ」とか、「きれいな映像だな」とか「志布志は水がきれいなところなんだな」という印象は持ったので、あながち映像が求めるものを外していたとは思えない。

最後に登場する少女が、スクール水着を着た芋洗坂係長や上島竜兵だったらどうだったか。そもそも擬人化せずに普通に志布志市のPR動画を作ったら、全く話題にならずに「税金の無駄遣い」と言われちゃったんじゃないのかな。

炎上のあとに別バージョンになった日清CMは仕掛けられた?

炎上が予想されていた映像をアップしたということでは、少し前に公開されて話題になったあとにクレームによって別バージョンになった日清カップヌードルのCMがある。

日清「カップヌードル」CM、1週間で突然「放送中止」 矢口真里、新垣隆ら起用に批判殺到して「謝罪」(J-CAST ニュース)

しかし、実は別バージョンの方がメインであって、最初から差し替えるのを見越して行った炎上マーケッティングではないかとも考えられる。実際に広告業界内では噂にもなっているそうだ。矢口真里さんや新垣隆さんが直接一般市民に危害を加えたわけではない。でも、これらの人たちがCMに出ることやムツゴロウ博士の持っている蛇への嫌悪感がどれくらいか反応を見てから、メインのCMに差し替えるということはありそうな話だ。リスクは有るが。結果として制作費がかかっていそうな小林幸子さんのシーンを残して最終版が作られ、現在はそれが流されていることからも想像できる。

同様に志布志市のPR動画を見てみると、先に書いたように普通の作りだと話題にはならなかったと言える。

自治体によるPR動画は注目されてナンボ

たとえば、宮崎県小林市の移住促進PRムービー "ンダモシタン小林"は少し前に話題になったが、これほどのヒット作はなかなか出てこないし、この動画も「では移住が促進されたか」と言われるとそうでもないのではないか。しかし小林市の知名度アップには役に立っているはずだ。

最近、いろんな自治体で凝りに凝ったPR動画が制作されていて、たとえばこんな佐賀市のPR動画は相当費用も手間もかけられていると思うけど、今回の志布志市ほど話題になっただろうか。

佐賀市プロモーションムービー 「W・R・S・B」

中には吉本の芸人を大量に使った茨城県のPR動画もあったけど、費用対効果を考えるとどうだったのか。

低予算で話題にするためには、アイデア勝負か炎上させるしかないと、まずは考えるのではないだろうか。

「炎上は知名度アップ」を前提にPR動画を作っているとしたら

その点で、今回の志布志市のPR動画は「志布志市ってうなぎの養殖日本一なんだ」という事実を広めて志布志市の知名度アップに繋がったことは、疑いようが無い事実だと思う。嫌悪感をコメントした投稿を付けて100万回シェアされたとして、その映像を見たすべての人が作品の内容に嫌悪感を感じたとしても、それで志布志のうなぎを一生食べなくなるかというと、そういうことにはならず、むしろ「どれだけ美味いか食べてみよう」と思う人も出てくると予想される。

その意味では、せっせと拡散している人は制作者側の意図にまんまと乗っかってしまっているのではないか。制作側は広告効果としては十分に元を取っていると言えるのではないか。

だから、安易にクレームで掲載を降ろさせるのは避けたい。制作者側の意図をしっかり知る必要がある。そうでなければ、今後似たようなプロモーション手法がブームになることもあるからだ。クレームを付けて動画を下げさせたはずが、広告効果があることを証明したという皮肉な結果にもなりかねない。「こんな酷いビデオがあるんですよ」とSNSで熱心に拡散している行為は、実は仕掛けの中に最初から組み込まれているものなのではないだろうか。

同じく最近、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」の記事で元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏が炎上している。彼は「炎上させる」のが目的で過激なことばを使い、コピペしたことも正当化しているが、これは彼の記事が今後ますます信用されなくなっていくだけで、同意する人が少々いたとしても政治が動くわけではなく逆効果となるので、マーケッティング的には完全な失敗である。

今後、たとえばベッキー、高畑淳子(裕太ではない)といったところは、広告代理店的には「オイシイ」使い方が出来ると見られているような気がする。そのときにまんまと仕掛け人の思惑に乗らないためにも、今回の動画制作に関してはきちんと流れを抑えておきたいものだ。

 


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