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2016参院選 見えてきたネット選挙のメリット・デメリット(その1:ネガキャンは誰にとってマイナスか)

投稿日:2016年7月8日 更新日:


2016年の参院選も、今日を入れてあと2日間となった。

見どころは盛りだくさんだけど、相変わらず盛り上がりに欠ける。
投票率が50%を割るのではないかという報道もある。
ちなみに、3年前、ネット選挙解禁直後の参院選投票率は52.61%だった。
今回から18歳まで選挙権年齢が引き下げられたけど、新しく増えた有権者の投票率も50%は超えないと予想されるので、有権者の2%ほどだとはいえ、全体の投票率を下げる方に向かってしまうのは、残念ながら事実だと思う。

そんな中、ネット選挙運動解禁から3年たち、解禁後2回目の参院選ということで、ネット選挙のメリットやデメリットが見えてきた。

今回はまず、デメリットについて考えてみたい。

率直な感想は、与野党問わず「ネガキャン(ネガティブキャンペーン)が増えてきた」というものだ。

選挙期間中でもSNSを使った情報発信やウェブサイトなどの更新が可能となったため、FacebookやTwitterのタイムラインには選挙関係の投稿が並ぶ。選挙に少しでも関わっている人など、ほとんど選挙の投稿でタイムラインが埋め尽くされていることだろう。

特定候補者への応援や、街頭演説のようすが延々と流れているのは、正直言って「お腹いっぱい」の面はあるものの、気になる候補者のようすを知るにはとても助かる。これはネット選挙運動解禁の一つの効果だと言える。

ただし、延々とネガキャンが続くと、うんざりするばかりか、投稿者に対する不信や、さらには候補者自身の評価を下げる要因ともなってしまう。政治不信や選挙離れにもつながりかねない。いったい、誰にとってメリットがあるのかわからなくなるケースもあり、あまりに子どもじみたものであるとニュースにもなる。

ネガティブ・キャンペーンが生み出すものは無い

今回例としてあげるのは、長野選挙区の務台俊介衆議院議員の一連の行動だ。
務台俊介議員は、今回自民党公認の若林健太候補の応援をしている。

あらかじめ断っておくが、私は若林健太氏とは面識があり、真面目で熱心な議員だと認識している。今回、自民党の憲法改正推進本部起草委員として憲法を争点にしてもらいたかったが、残念ながら「争点ではなく興味もない」とテレビのインタビューには答えていてガッカリした。しかし、ここでは彼の資質を問題にしているわけではない。

務台俊介衆議院議員(Facebookのアイコンより)

務台俊介衆議院議員(Facebookのアイコンより)

自民・務台衆院議員が民進新人の杉尾氏を「落下傘…」と“直接口撃” 支持者が一時小競り合いに(産経ニュース 2016.7.5)

10日投開票の参院選長野選挙区(改選数1)で5日、しのぎを削る民進、自民両党が思わぬ“場外戦”を展開した。松本市のJR松本駅前で、演説前に有権者とふれあっていた民進党新人の杉尾秀哉氏(58)に自民党の務台俊介衆院議員(長野2区)が側まで近寄り「落下傘より健太さん」などと“口撃”した。それがきっかけで民進、自民双方の支持者とみられる男性同士の言い争いに発展したが、杉尾氏サイドが「相手にしないように」とたしなめ、その場を収めた。

産経新聞と言えば自民党寄りの記事が多いことで有名だが、さすがにこれは酷いと判断したのだろう。記事の内容をそのまま読むと、小学生が「ばーか、ばーか、お前の母さんでーべーそ!」と言っている姿が浮かぶ。今の小学生は、こんなこと言わないだろうけど。

これがそのときの写真だそうです。

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務台俊介議員が杉尾候補に向かって「落下傘より健太さん」と言っているようす。 ※周囲の人の顔は若干ボカしてあります。

務台氏のアップ。叫びながらジャンプしているところです。

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落下傘かそうでないかが争点の選挙なんかあるのか?

務台議員は「今回の選挙は落下傘かそうでないかが争点だ」とも言っている。

「落下傘候補」というのは、選挙において、その選挙区にゆかりのない人物が立候補することを言い、国政選挙や知事選などの首長選挙では地元に住民票がなくても立候補できるため、しばしばこのような落下傘候補を見かける。たとえば自民党でも、2005年の郵政選挙で「小泉チルドレン」と呼ばれる候補者にも落下傘候補が何人も見られた。近いところでは、私の友人でもある昨年接戦を制した佐藤孝弘山形市長(自民党公認)は、父親が山形大学を出ているということぐらいで本人は山形には関係なかった。しかし、優秀な人材が地元や国民のために働くのであればそれは大きな問題とはならず、だからこそ地元出身でなくとも立候補が法的に可能なのだ。

私は長野県上田市生まれで高校まで上田で育ち、社会人になってからも松本に4年、穂高に6年暮らした。今でも実家は東御市にある。もちろん、郷土に誇りはあるし大好きだが、昔からその「閉鎖性」は問題だと思っていた。優秀な人材であれば、長野出身かどうかはこだわらないほうが良いのではないか。

しかし、長野県内には「『信濃の国』(県歌)を唄えなければよそ者だ」という風潮が残っているところがある。私は小学校(上田市立清明小学校)で合唱をやっていたこともあり、いまだに『信濃の国』は全部歌えるが、「それがどうした」と思う。そんなことを言う「信州人」を恥ずかしくも思う。

ましてや政治家である。優秀で熱意を持ち、信州に愛情を持って来てくれるのであれば、地元産かどうかなど、ささいいなことではないか。むしろ歓迎すべきことではないだろうか。

先の産経新聞にもたしなめられる始末だ。

「白鵬」になることなかれ 長野(産経ニュース 2016.6.23)

公示前の16日、自民党候補の応援のために信州入りした安倍晋三首相(党総裁)は街頭演説でこう連呼した。「落下傘より健太さんであります。どうか、この声を広げていきたい」落下傘とは長野県出身でない民進党候補者を指す。自民党の務台俊介衆院議員は21日、松本駅前でマイクを握り「落下傘か健太さんかが最大の争点だ」と言い放った。出る言葉は「落下傘…」ばかり。22日の同駅前での演説でも繰り返した。わが耳を疑った。自民党は長野選挙区で「落下傘か否か」を有権者に真っ先に問う戦略らしい。果たしてそれがどれだけ重要なのか。時代錯誤も甚だしく、参院選のあるべき姿ではない。

また、7月7日には、大河ドラマ「真田丸」の真田昌幸氏を演じる草刈正雄氏の写真をインターネットから拾ってきて「真田昌幸氏も地元第一主義を訴える」と投稿している。これにはパブリシティ、肖像権、著作権そして公選法違反の問題も指摘されている。

※写真は加工していますが、元画像は草刈正雄氏の写真となっています。

※写真は加工していますが、元画像は草刈正雄氏の写真となっています。

さらに、これはネガキャンではないんだけど、7日には歌手の松山千春氏が来て歌を披露したということで、なんだかこうなると警察を挑発し、公選法に挑戦しているようにも見えて、それはそれで清々しさまで感じてしまう。北海道では普通かもしれないけど、これが認められるのであれば、公選法はもういらないんじゃないか。餅屋を応援で呼んで餅を配るとか、何でもありになってしまう。

ここまででも、すでに胸焼けがしそうな状態だが、務台議員といえば以前、待機児童問題に関して、

「東京、ある程度不便でないとダメ」待機児童問題で務台俊介・衆院議員が発言【保育園落ちた日本死ね】(ハフィントンポスト 2016.3.18)

待機児童対策が問題となっていることに関し、自民党の務台俊介衆院議員(長野2区)は3月17日、国会内で開かれた会合で「『保育所落ちた』という話もあるが、全部便利にしてしまうと、ますます東京に来て子育てをしようということになる。東京にいると、ある程度コストがかかって不便だというふうにしなければ駄目だ」と述べた。時事通信ニュースは、この発言について「待機児童問題が深刻化している都市部住民の反発を招く可能性もある」と指摘している。

と発言して、自民党の谷垣幹事長に苦言を呈されている。ちょっと地元優先の意識が強すぎるのではないか。半径5mほどしか見えないのだとしても、国会議員はまず国益を考えていただきたい。

この他、松本サリン事件での報道問題を取り上げて、今回立候補している杉尾秀哉氏の報道姿勢から人格まで批判している。批判や議論はあっても良いと思うが、杉尾氏の応援にまわっている井出庸生衆議院議員の投稿のコメント欄にも書き込んだりと行動がエスカレートしている。また、務台議員の署名入りの怪文書(署名入りなので怪文書とはいえないが)がポスティングされた事件もあり、これは公選法違反が疑われるが、差し出し人が本人かどうか特定されず、務台氏本人からの制作・投函を否定するコメントも無い(私が見つけられないだけかもしれないので、否定コメントがあれば教えていただきたい)。

務台議員の署名入りでポステイングされた文書

務台議員の署名入りでポステイングされた文書

今こそポジティブ・キャンペーンを

私は、3年前の拙著『マスコミが伝えないネット選挙の真相』(双葉書房)の「まえがき」の最後に以下のように書いた。

 楽しい選挙をしましょう。
誹謗中傷ではなく、応援合戦を。
政策を非難しあうのではなく、自慢し合おう。
ちょっとの怒りとたくさんの希望を。

そんな選挙になったら、きっと投票率も上がるでしょう。

今でも、この気持ちは変わらない。

特に、今回の参院選からは新たに240万人の若者が有権者となっている。

落選運動やネガティブキャンペーンは法的には認められているし、落選運動は韓国で、ネガキャンはアメリカでかなり熱心に行われている選挙手法だ。だからといって、ネガキャンに終始する姿を見せつけられていて、有権者はどのような感情を持つだろうか。

ネット選挙運動が解禁となり、選挙期間中でも自由にネット上で支援する候補者への投票を呼びかけることができる。しかし、それは同時に批判も際限無く発信できるということだ。

「別に彼だけの問題ではない。野党だって政権批判しているじゃないか」という主張をする人もいるだろう。野党が政権批判をするのは、それが本道だからだ。しかし問題はそこにあるのではない。これは与党がどうとか野党がどうとかいう問題ではなく、政治全体で考えなければならないことなのだ。

候補者やその支援者には、相手候補への誹謗中傷ではなく、自候補のお勧め話をどんどん発信してもらいたい。それが政治や選挙への関心を生み、長い目で見て投票率の向上に繋がるのだと思う。

この拙著に対して、ネット選挙運動解禁の立役者となった平井卓也衆議院議員(自民党)は、書籍の中で自民党の批判も入れているにもかかわらず、「この本はいくつか出たネット選挙関連の中で秀逸である」と褒めてくれた。そこが自民党の懐の深さに繋がっているようにも思える。その後、彼と会ったときに言われたのは、「今後はネガティブキャンペーンの増加が懸念される」。まさに今、彼の予感が当たり始めている。

ネット選挙運動が行える今こそ「ポジティブ・キャンペーン」を行う必要があるのではないだろうか。
「ネガティブからポジティブへ」というのは、あのマック赤坂氏のセリフだが、ネット選挙としてネガキャンを減らして行く試みは、今後必須になっていくはずだ。

 


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